京都暮らし方(カタ)ログ
PEOPLE
神尾 顕暢さん
表具師
1987年新潟県新潟市生まれ。高校卒業後、生家の表具店での修業を経て、2009年表具工房の静好堂中島(京都市北区)へ入社。現在は国の重要文化財・裏千家 今日庵や京都迎賓館、熊本城のふすま・障子など幅広く表具を手がけている。
「表具の本場は京都」という言葉の意味を
日々ひしひしと実感しています。
父、兄の背中を追って修行スタート
昔から歴史ある古いものを見ては「すごいな、すごいな」と感心するような子どもでした。高校を卒業後軽い気持ちで、父の代から続く家業の表具店を手伝い始めたのも、今思えば自然な流れだったのかもしれません。仕事に就いてから数カ月後、修業時代を京都で過ごした父が「表具の本場はなんといっても京都。だからお前も京都に行って本物に触れてこい」と言ったんです。父の勧めに加えて、兄が静好堂中島で10年間在籍していたこともあって、僕もお世話になることに。
千年の都に伝わる“本物”に触れられる喜び
新潟で家業を手伝っていたころの仕事は、掛け軸のしみ抜きをはじめとする修復作業が中心でした。ところが京都に来てからは、掛け軸やふすま、額障子、屏風といった幅広い表具の仕事に携わることができるようになりました。その奥深さに驚き、父の言う「表具の本場は京都」の意味を実感しています。今では寺院や茶室に出向いて作業させてもらう機会も多くなりました。長い歴史の重みを肌で感じながら、時には重要文化財の建築などに自分が直接関われることを、とてもありがたく感じています。そういった現場での仕事の予定が決まると、ワクワクして前日なかなか眠れないこともあるほどです。
京都は表具師にとってのベストフィールド
日本画や古い町並みを見るのが好きなので、休日はよく出かけます。京都には、すばらしい絵画と身近に触れられる美術館や趣ある建築があちこちに点在し、飽きることがありません。また故郷に信濃川があったように、京都には鴨川があり、友人たちとのんびり水辺で過ごすととてもくつろげます。歴史ある建物や美術品、豊かな自然がすぐ近くにある京都はとても居心地が良いので、まだ相手はいませんが(笑)結婚してもずっと住み続けたいと思っています。そして、親方のように流れるような無駄のない美しい仕事ができる職人になるべく、さらに研さんを積んでいきたいですね。
(2015年4月インタビュー)