二十四節気と京都の暮らしの文化
わたしたちが大切にしたい「日本伝統の美意識や価値観、奥深い文化」。
その背景にあるのは「日本の豊かな自然と人との共生」です。
京都では、季節の移ろいを分かりやすく表した「二十四節気(にじゅうしせっき)」によって、豊かな自然を暮らしに織り込み、共に生きる「暮らしの文化」を培ってきました。
ここでは、「二十四節気」をご紹介すると共に、京都の24の美しい季節と暮らしをご案内します。
二十四節気について
二十四節気は、暦の1つで、約2週間ごとの、こまやかな季節の変化を表します。例えば、季節のはじまりを表す「立春、立夏、立秋、立冬」や、昼夜の長さが等しくなる「春分、秋分」はご存知の方も多いでしょう。一方、虫たちが冬眠から覚める時期を表す「啓蟄」など、聞き慣れないものも。約2週間ごとなので、1つの季節(3ヶ月間)は6つに分けられ、春夏秋冬を24の季節で表します。

二十四節気と京都の暮らし(華道 未生流笹岡 家元 笹岡隆甫さん インタビュー)
笹岡 隆甫さん
華道 未生流笹岡 三代家元
1974年京都生まれ
京都大学工学部建築学科卒業
京都ノートルダム女子大学客員教授
大正大学客員教授
京都市教育委員会委員
京都市「DO YOU KYOTO?大使」
文化庁京都移転・私たちができること推進チームメンバー
京都は自然が身近にあるまち。 暮らしの中で季節を感じて。
まち歩きをしながらインスピレーションを得る
生粋の京都人である笹岡隆甫さんは伝統ある華道「未生流笹岡」の家元でありながら、新しいこともたくさん取り入れ、様々なアーティストとコラボレーションするなど今注目を集める若手華道家です。そんな彼の日常をうかがうと、「京都は山に囲まれた盆地で、市中にも小高い山があるため、まちを歩けば自然がすぐそばにあることを実感できます。近くの吉田山に登り、木々を眺めることで学ぶことはたくさんあります。」いけばなでは切り花を用いるが、もともとどのように枝葉を伸ばし根をはっていたかにまで想いを巡らせよ、と教わる。また、満開の状態ではなく、つぼみがちにいけ、その花の命の移ろいに目を留める。「花がそばにあるだけで、コンクリートに囲まれた生活から一歩踏み出すための新たな発見がたくさんあるはずです。」
二十四節気と京都の暮らし
京都には日本の伝統文化が色濃く息づいています。床の間の掛け軸や花、京料理や京菓子、祭や伝統行事など、二十四節気に応じて自然を暮らしに取り入れています。「桃の節句には蛤のお吸い物やちらしずしをいただきますし、正月には白味噌に頭芋の入ったお雑煮が欠かせません。頭芋はのつこつして、幼いころはあまり好きではありませんでしたが(笑)」笹岡家では二十四節気に基づいた花をいけることも、もちろん欠かすことができない。「9月の白露には白い花をいけよ、と伝書にあります。ススキをいけて家族や友人と中秋の名月を愛でるのは幸せな時間ですね。」カレンダーを見て二十四節気を意識するだけで季節や自然に寄り添った暮らしができそうです。
暮らしに取り入れやすい二十四節気とは
「まずは手帳に二十四節気の文字を書き込む。次にその節気の花を調べてみる。そして花を求めて街を歩いてみる。さらに、家の中に1輪の花があれば気持ちが明るくなります。やさしい光が入り込んだように空気が和みます。以前、旅行先の料理屋さんで秋草を頂きました。ホテルのバスルームにいけるだけで、誰かが迎えてくれたような、あたたかい気持ちになりました。」お家ごとや地域ごとにも二十四節気を節目に様々な習わしがあり、それも面白いと笹岡さん。こうしなければいけないという決まり事はありません。スーパーで旬の野菜が気になったり、まちかどで季節の動植物が目に留まるようになれば、今まで意識していなかった新たな暮らしの一歩が踏み出せるかもしれません。
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写真提供/華道 未生流笹岡 家元
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写真提供/華道 未生流笹岡 家元
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写真提供/華道 未生流笹岡 家元
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写真提供/華道 未生流笹岡 家元
(2017年3月インタビュー)
二十四節気の月日と説明(説明文提供:柏井壽さん,株式会社PHP研究所)
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立春(りっしゅん) 2月4日〜2月17日ごろ
2月4日〜2月17日ごろ
新たな年の始まり。万物みな冬の眠りから覚め、芽吹き、花開く支度を始める。春は名のみの。厳しい寒さは続くが、春の兆しはそこかしこに。立春を過ぎて都大路に吹く風、春一番を心待ちにする。
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雨水(うすい) 2月18日〜3月4日ごろ
2月18日〜3月4日ごろ
おおかたの雪は雨に変わる。春雨を受けて、野山に積もった雪は形を崩す。ちろちろと雪解け水が鴨川に流れだす。春の足音に耳を澄ます。水ぬるむ、はもう少し先になるか。まだまだ水は冷たい。北野の梅が開きだす。
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啓蟄(けいちつ) 3月5日〜3月19日ごろ
3月5日〜3月19日ごろ
蟄は、虫たちが土の中に籠もり隠れることをいい、啓は開くこと。つまりは虫たちが地中から這い出る時期。人でいうなら、寝起きに布団から出る勢いがつく時候。虫も人も、春の暖かさを実感し、京の街も動きだす。
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春分(しゅんぶん) 3月20日〜4月3日ごろ
3月20日〜4月3日ごろ
お日さまが真東から昇り、真西に沈む。三途の川を挟んで、こちらが此岸、向うが彼岸。ご先祖さまが居られるだろう極楽浄土は西山の方角にある。春分の前後七日間をお彼岸と呼ぶのはそれゆえのこと。
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清明(せいめい) 4月4日〜4月19日ごろ
4月4日〜4月19日ごろ
清浄明潔を略して清明と呼ぶ。字を見るだに清々しい。生きとし生けるものすべてが、清らかに、明るく生命を謳歌する候。京の街のあちこちで、桜の花が咲きほこり、都大路は桜色に染まる。
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穀雨(こくう) 4月20日〜5月4日ごろ
4月20日〜5月4日ごろ
春雨降りて百穀を生化すればなり。そんな言葉がある。穀雨の穀は穀物を意味し、このころに農作物の種を蒔くことで、雨の助けを借りての生育を願う。春の華やぎも終わり、京の街も桜色から緑色に変わる。
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立夏(りっか) 5月5日〜5月20日ごろ
5月5日〜5月20日ごろ
暦の上では、この日から夏が始まり、立秋まで続く。肌の実感としてはまだ晩春だが、空の青、木々の緑が夏を予感させる候。京都三大祭の先陣を切って、葵祭が行われる。王朝絵巻さながらの祭礼は新緑によく似合う。
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小満(しょうまん) 5月21日〜6月4日ごろ
5月21日〜6月4日ごろ
一年で最も過ごしやすいのがこのころ。湿度も低く、吹く風も爽やか。暑くなく、寒くなく、身体に気がみなぎってくる。田植えの準備が始まる候は、秋に蒔いた麦の穂が付くころで、少しばかり安心するので、小満と呼ぶ。
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芒種(ぼうしゅ) 6月5日〜6月20日ごろ
6月5日〜6月20日ごろ
稲でいうなら籾殻。先端にある、とげのような突起を芒という。つまりは稲をはじめとする、穀物の種を蒔く時期とされる。曇り空の下、あちこちの田んぼで田植えが行われ、そろそろ梅雨に入るころ。
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夏至(げし) 6月21日〜7月6日ごろ
6月21日〜7月6日ごろ
夏に至るころ。ではあるが、京の街はたいてい梅雨まっただ中。雨に煙る東山三十六峰を見上げ、雲に隠れたお日さまを探す。一年で最も昼間が長い時期ながら、陽がささないので実感は薄い。蒸し暑さだけが夏を謳う。
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小暑(しょうしょ) 7月7日〜7月22日ごろ
7月7日〜7月22日ごろ
言い得て妙。小さな暑さを感じる候。梅雨が明けるかどうか微妙な時期に、気をもんでいるのは祗園祭の関係者たち。七月いっぱい京都の街は祗園囃子で彩られ、夏本番を迎える。その始まりを告げるのが小暑。
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大暑(たいしょ) 7月23日〜8月6日ごろ
7月23日〜8月6日ごろ
いよいよ夏真っ盛り。子どもたちは夏休みに入り、鴨川の飛び石には歓声が飛び交う。一方で、おとなたちは、梅雨の雨をたっぷり吸った鱧に舌鼓を打つ。祗園祭の別名は鱧祭り。京の大暑を乗り切るには鰻と鱧が欠かせない。
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立秋(りっしゅう) 8月7日〜8月22日ごろ
8月7日〜8月22日ごろ
暦の上では秋になるが、盆地特有の暑さはまだまだ続く。盂蘭盆会の支度。ご先祖さまを迎えるための迎え鐘を「六道珍皇寺」で撞くころが、京の暑さのピーク。そして五山送り火が終わると、秋の気配が漂いはじめる。
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処暑(しょしょ) 8月23日〜9月6日ごろ
8月23日〜9月6日ごろ
処暑の処は、おさまるという意。ようやく暑さがおさまってくるころ。昼間の暑さは相変わらずでも、朝晩はめっきり涼しくなり、虫のすだきも聞こえはじめる。京の街なかでは地蔵盆。子どもながら夏の終わりを惜しむ候。
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白露(はくろ) 9月7日〜9月22日ごろ
9月7日〜9月22日ごろ
秋の気配が濃くなる候。夏の風物詩ながら、鴨川の床店に行くなら、この時期がお奨め。秋風を頬に受けながら、落ち鮎や名残鱧に舌鼓を打つ。東山に月でも浮かべば何も言うことはない。鴨川の流れもゆく夏を惜しむ。
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秋分(しゅうぶん) 9月23日〜10月7日ごろ
9月23日〜10月7日ごろ
春分と同じく、昼と夜の長さが、ほぼ同じになる日。ここから秋の夜長がはじまる。秋の彼岸を彩るのは曼珠沙華。舌を喜ばせるのは〈おはぎ〉。春は牡丹で〈ぼたもち〉。秋は萩で〈おはぎ〉。素朴な菓子が秋を謳う。
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寒露(かんろ) 10月8日〜10月22日ごろ
10月8日〜10月22日ごろ
10月に入ると、涼しい、は、寒い、に替わる。草木に露が降り、空気が静まってゆく候。稔りの秋の始まりでもあり、そろそろ稲刈りも終わる。秋野菜も出回りはじめ、いよいよ食欲の秋到来。燗酒が恋しくなるころでもある。
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霜降(そうこう) 10月23日〜11月6日ごろ
10月23日〜11月6日ごろ
朝早く、鴨川堤を散歩すれば、お日さまを受けて、河原の芝生が白く輝いているのに気付く。霜が降りれば、吐く息も白くなり、澄み渡った空気に身が引き締まる。短い秋のはじまり。葉もそろそろと色付く。
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立冬(りっとう) 11月7日〜11月21日ごろ
11月7日〜11月21日ごろ
11月に入ったばかりというのは、感覚的には晩秋だが、暦の上では冬。火が恋しくなるころ。お火焚祭が都大路のあちこちで行われる。炉も開かれ、茶人正月とも呼ばれる候。どの店の亥の子餅にするか。大いに迷う。
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小雪(しょうせつ) 11月22日〜12月6日ごろ
11月22日〜12月6日ごろ
清明と同じく、京都の街が最も賑わう候。お目当てはもちろん紅葉。名所はどこも人であふれ、駅の中は大混雑。寒さを感じるいとまもない。街中の小さな隠れ古寺。築地塀から顔を覗かせる紅葉が、凛として美しい。
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大雪(たいせつ) 12月7日〜12月21日ごろ
12月7日〜12月21日ごろ
さすがに師走に入ると、冬到来を実感する。比叡おろしが吹き、花街祗園では正月事始めが行われ、ひと足早く正月気分。名残の紅葉を見おさめて、蕪蒸しで身体を中から温める。京も冬本番。
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冬至(とうじ) 12月22日〜1月4日ごろ
12月22日〜1月4日ごろ
一年で最も夜が長くなる、陰の極み。ここから陽に転じるので、一陽来復ともいう。柚子湯に冬至かぼちゃ、冬至粥。いずれも厄払い。冬の夜長に愉しみは多い。年越しから正月。このころの京都には独特の空気が流れる。
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小寒(しょうかん) 1月5日〜1月19日ごろ
1月5日〜1月19日ごろ
寒の入り。京の底冷えが身に沁みる候。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも幕を下ろす。川鳥が鴨川を舞い飛び、東山がうっすらと雪化粧する。九条ネギや餡かけ、蒸しもので、都人は冬の寒さを紛らす。
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大寒(だいかん) 1月20日〜2月3日ごろ
1月20日〜2月3日ごろ
夜明け前が一番暗いのと同じく、立春前が一番寒い。底冷えに身体を震わせながら、やがて訪れる春を待つ。暦上の最後の行事が節分祭。多くの都人は吉田神社を目指す。一年の邪気を祓い、心新たに立春を迎える。
京都二十四節気
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立春(りっしゅん) 2月4日〜2月17日ごろ
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雨水(うすい) 2月18日〜3月4日ごろ
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啓蟄(けいちつ) 3月5日〜3月19日ごろ
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春分(しゅんぶん) 3月20日〜4月3日ごろ
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清明(せいめい) 4月4日〜4月19日ごろ
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穀雨(こくう) 4月20日〜5月4日ごろ
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立夏(りっか) 5月5日〜5月20日ごろ
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小満(しょうまん) 5月21日〜6月4日ごろ
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芒種(ぼうしゅ) 6月5日〜6月20日ごろ
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夏至(げし) 6月21日〜7月6日ごろ
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小暑(しょうしょ) 7月7日〜7月22日ごろ
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大暑(たいしょ) 7月23日〜8月6日ごろ
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立秋(りっしゅう) 8月7日〜8月22日ごろ
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処暑(しょしょ) 8月23日〜9月6日ごろ
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白露(はくろ) 9月7日〜9月22日ごろ
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秋分(しゅうぶん) 9月23日〜10月7日ごろ
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寒露(かんろ) 10月8日〜10月22日ごろ
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霜降(そうこう) 10月23日〜11月6日ごろ
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立冬(りっとう) 11月7日〜11月21日ごろ
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小雪(しょうせつ) 11月22日〜12月6日ごろ
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大雪(たいせつ) 12月7日〜12月21日ごろ
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冬至(とうじ) 12月22日〜1月4日ごろ
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小寒(しょうかん) 1月5日〜1月19日ごろ
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大寒(だいかん) 1月20日〜2月3日ごろ
※京都二十四節気は,嵐電開業100周年にあたり作成されたものです。